その後、スペインから独立したメキシコとアメリカの間で戦争が起こり、アメリカが勝つとナバホの大地はアメリカの治める所となります。するとアメリカ人は「ナバホの地に金鉱が有りそうだ」として彼等を追い出してしまいます。これが「ナバホのロング・ウォーク」と呼ばれる悲劇で、ニューメキシコ州の東まで、およそ500kmの道のりを、20日間歩かされた後、幽閉されました。
しかし結局、金鉱は発見されない一方、ナバホの幽閉維持にも費用がかかったため、4年後に故郷への帰還を許されます。以後ナバホは現在の地で順調に人口を増やし、ナバホの国(ナバホ・ネイション)も拡大していきます。
この時期に特質すべきものとして、「銀細工のはじまり」があります。銀細工はもともとスペインが統治していた時代に、メキシコで銀鉱山が発見された事がきっかけで始まったものなのですが、ナバホは真っ先にこの技術を習得しました。ですから現在、全米のインディアンに普及している銀細工の元祖はナバホなのです。
しかし近代になって、厳しい時期がありました。それはウラン鉱の採掘です。アメリカとソ連の冷戦時代に核開発競争が起こり、ナバホの地で多量のウランが採掘されました。そしてこの仕事に従事したナバホの人々はウラン鉱石の粉塵を吸い、多くの死者を出しました。現在は、鉱山跡はすべて封鎖されています。
現在もナバホはいくつかの問題をかかえています。失業率が高いこと、白人文明に接して以来、栄養価と脂肪分の高い食品が普及し、肥満者や糖尿病患者が増えていること、酒に対して抵抗力のなかった彼等に、白人から酒を供されたのがきっかけで、アルコール中毒患者が増えている事などです(ナバホ・ネイションでは飲酒が禁止されているので、注意してください)。
もう一つの問題はナバホ語を話す人達が減っている事ですが、これは少しずつ改善されています。言葉は文化の基礎です。現在ナバホ・ネイションでは義務教育からナバホ語を教えています。
10年ほど前に『ウインドトーカーズ』という映画ができ、日本でも公開されました。これは太平洋戦争時代、アメリカが暗号にナバホ語を使った史実に基づいて、作られたもので、「暗号発信者のナバホをニコラス・ケイジ扮する白人が守る」という物語でした。日本軍は、最後までこの暗号を解読する事ができませんでした。
この映画はナバホの人々を鼓舞するのに役立ち、ナバホ語を見直すきっかけにもなっています。現在、アリゾナ大学や、ニューメキシコ大学でもナバホ語を教えています。
ナバホ族は白人文化を取り入れて生活する一方、伝統も大切にしており、彼等の伝統的な家「ホーガン」の中で、お祝いや病気治癒の祈りとしてメディスン・マン(ナバホの僧侶、祈祷師)による祈祷もしばしば行われます。
この祈祷の時に床に描く砂絵をコンパクトにして板の上に描いた物は、ナバホ特有のインテリアとして旅行者に人気があります。