国立公園の目的
人間は生態系のしくみや、それを構成している生物の全てを把握しているわけではなく、一度滅びた自然、生物は二度と創造する事はできない。自然度の極めて高い地域は極力人手を加えずにそのままの状態で保存しておこうという考えに基づき、アメリカの国立公園制度は設立された。

文明を築くためには自然の開発(破壊)をも善とみなす当時の考え方の中で、それに歯止めをかけようとするこのような考えは、当時は非常に新しいものであったことが容易に想像される。これもすでに北米大陸の各地で起こっていた、かなりの土地開発の反省の上に生まれたものであるわけだが、この制度をきっかけに世界各国で国立公園設置の動きが広がっていく。

国立公園内はあくまで自然の掟に従い、人手を加えずにそのままの状態に放置しておこうというのが思想であり、アメリカの国立公園制度である。1980年代半ばの夏、イエローストーンが大火災に見舞われた。山は2カ月半にわたって燃え続け、9月に降った雪で鎮火したのだが、この間「人為的には消火せず」と自然の掟を尊厳するプリザベーションの原則を貫こうとする公園局と、「消火すべき」という意見の人々との間で大きな論争があった。

結果的に、多大な損益を払ってしまったが、高熱でしか種が開かない松ぼっくりが芽を出したり、高く聳えていた大木のお陰で太陽の光が当たらなかった白樺などが息を吹き返し、結果として野生動物が食物を摂取しやすくなるという、今まで長きに渡って繰り返した野生のサイクルを見事に自然の力で蘇らす事ができたのである。

アメリカの国立公園は日本と異なり、歴史文化遺産も保護の対象にし、54の国立公園、38の国立史跡公園、73のナショナルモニュメント(国立記念碑)他、実に20種類、全部で374箇所の公園や記念物がある。国立公園は、連邦内務省の国立公園局(NPS)が管理責任を持っている。

国立公園局は、すべての国立公園、多くの国定記念物、その他さまざまな名称のついた保護物と歴史的な特徴を管理するアメリカ合衆国連邦機関。1916年8月25日に、「風景、自然、史跡、および野生動物を保存すること」を目的とした国立公園局オーガニック法を通し、議会によって創設された。

国立公園局の直接管理のほとんどは、上院によって確認された国立公園局長官が監督している。現在、米国には、デラウエア州を除いた全ての州と自治領に少なくとも1つの国立公園局が存在し、実際の公園内のホテル、キャンプ場、レストラン、ツアーの管理や運営は、契約された民間企業が行っている。
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