恐竜とはなんだろう? 今から2億2500万年前から6500万年前に生きた爬虫類。つまり、人間が生まれる6000万年以上も前に絶滅した動物である。
が、本当のことは誰にもわからない。わかっている事は、彼らが1億6千万年という途方もなく長い間、地球上に君臨していたという事と、鶏ほどの大きさのものから長さが30mを超えるものまで、恐竜と一言で済まされていること。
想像して欲しい、これから1億年後に我々の化石がある文明を持った生物に発見された時、人間、犬、熊、象も含めて一まとめで同種類扱いされるのと同じわけである。ティラノザウルスにしてみれば、体長が30cm位しかないコンプソグナトゥスと一緒にされてはたまったものではないだろうが、今となっては彼らもどうしようもできない。我々もしっかりと自分達の記録を残しておく必要があるなと、妙に納得させられてしまう。
恐竜の生きた時代は中生代と呼ばれ、三畳紀、ジュラ紀、白亜紀に分かれている。三畳紀とジュラ紀には裸子植物やシダ植物が繁茂し、白亜紀には被子植物が現れた。
三畳紀には、特に湿気を好む裸子植物、シダやトクサが湿った水辺に繁茂しており、ジュラ紀は、浅い海が世界の多くの地域に広がった時代、またソテツの時代とよばれ、これらの植物が針葉樹はシダなどとともに繁茂していた。白亜紀も北アメリカやヨーロッパなどでは浅い海が広がった時代で、被子植物が繁茂しはじめるものの、暖かい気候は続いていた。
今から500万年前の南極大陸にはまだ樹木の化石があったことから、少なくも今から数千万年前には、南極に厚い氷床があったとは考えられず、現在のように寒くなったのは、数100万年前以降ということになる。また、6500万年前の白亜紀の終わり頃に、現在の高緯度地方に恐竜が住んでいたり、サンゴ礁などがあったことは、化石からわかっている。中生代はあたたかく、今より平均気温は10~15℃ほど高かった。恐竜に取っては長寿の秘訣となり、当時は温暖化など騒がれることもなく、恐竜や当時の生物にとって住みやすい気温だったわけで、今の人類がその時代では生きられないであろう。 「本日、東京都心部の最高気温は最高で58℃を記録しました。アメリカのラスベガスでは65℃を超える見込みです……」
恐竜に関しては、この20年で実に色々な新発見があった。今までは恐竜はまるでゴジラのように、のろのろと動くものと考えられていたが、その後、恐竜の足跡の化石から爪の入る角度、力の入り方を研究し、実は恐ろしく機敏なスピードで動いていた事がわかった。
また、肉食恐竜の歯は、まるでナイフのような形をしていて、歯の周りには細かなギザギザがついているものもあり、肉を切るステーキナイフのような形をしていた。草食恐竜の歯は、ノミや先割スプーンなどような形をしていて、葉を食いちぎったり、噛み切るのに適しおり、特に白亜紀のサウロロフスやトリケラトプスの仲間では、かみ合わせがまるでハサミのようで、かたいものでもかみ切れるようになっていた事までわかっている。
歯は白亜紀に発展し、歯の生え変わりもすばやくできるように、サメの歯の様なベルトコンベアー方式で生え変わる仕組みになってきた。肉食恐竜にとって歯は命の綱、人間のように生え替わるのに時間がかかるのではだめなのである。
対して、ジュラ紀の草食恐竜の歯は貧弱だったようだ。貧弱な歯を持った草食恐竜は、やわらかな若葉をつまんで口の中へ押し込む程度のことしかできなかったが、彼等の糞の化石を研究する事により糞に交ざって石が発見され、その石が胃の中で食べ物をすりつぶすのに役立ったと考えられる。
竜脚類の恐竜はおそらく、体を大きくすることと新陳代謝をおさえることで、それほど食料をとらなくても体温維持や活動にはことかかなかったと思われる。竜類類は、よく見ると全体の体に対して頭顎骨が非常に小さいことに気が付くが、同じ植物食の恐竜である鳥脚類や角竜類の恐竜は、頭顎骨が大きく頑丈で、さらに歯やあごも丈夫にできている。
このちがいを見ると、竜脚類と鳥脚類や角竜類とはまったく別の動物のように思われる。竜脚類はジュラ紀後半に繁栄し、鳥脚類と角竜類は白亜紀後半に繁栄した。
白亜紀後半に食料としていた植物が裸子植物から被子植物にかわったことが原因で、あごや歯の頑丈な鳥脚類と角竜類が白亜紀後半に繁栄したのだろうが、そうであっても鳥脚類と角竜類のあごと歯は頑丈で、これらの恐竜は相当な量の植物を食べていたと考えられる。 これだけ食料が必要だったということはこれら恐竜の新陳代謝は相当活発だった可能性があり、白亜紀後半の恐竜はジュラ紀の恐竜達のようにのんびりできず、厳しい生存競争の中で必死に生きていたように思われるのだ。
地球上に1億6千万年も君臨してきた兵達、我々の想像を遥かに超えるシステムを保有していたに違いないが、ある日忽然と滅亡への道をたどる事となる。
恐竜がなぜ絶滅したかについては、いろいろな説があるが、最も有力説では、隕石衝突による絶滅である。この説は、恐竜の絶滅した中生代と新生代の地層の境界付近に隕石起源であるイリジウムという物質が濃縮していることから、大隕石の衝突によって、酸性雨や地球的規模の気候変動があって、恐竜が絶滅したというもの。
このように「突然」の出来事のために恐竜が絶滅したということだが、この「突然」とは時間でいえば、数100~数10万年もかかった出来事なのだ。
たとえば、北アメリカの恐竜の種類が最も多かったのは、7600万~7300万年前までで、白亜紀の末期(6500万年前)まで生きのびたのは30属にすぎなかった。そのうちの9属は、白亜紀をすぎた新生代まで生きのびていたということもわかってきた。また、恐竜の絶滅を考える時には、同時に起こった海に住むアンモナイトやプランクトンの絶滅も説明しなくてはならない。絶滅をその事だけでとらえるのではなく、生物や自然環境のうつり変わりの中でとらえることが重要であるということを示している。
恐竜が滅びた後に、陸上では哺乳類や鳥類が繁栄していく。恐竜と哺乳類・鳥類の体や生活のちがいに、絶滅したものと、絶滅をまぬがれたもののちがいが隠されている。哺乳類と鳥類は、ともに恒温動物で、子供がある程度大きくなるまでめんどうをみる。また、哺乳類と鳥類は爬虫類にくらべて心臓や肺(循環器系)の働きが強く、効率のよい呼吸を行なえる。
過去の大気の成分についてもよくわかっていないが、一説には大気の二酸化炭素のふくまれる割合が増加したというものがある。 恐竜が栄えた中生代の中頃から、太平洋やそのまわりに現在とは比較にならないほど大規模で活発な火山活動が起った。この火山活動では大量の二酸化炭素が噴出した。 この二酸化炭素は地球に温室効果をもたらし、恐竜にすみやすい湿潤温暖な気候を提供したが、一方ではその増加は循環器系に弱点をもつ大型恐竜の衰退を招くことになったという説もある。